30年以上、私の心の中に生き続けた言葉
◆「笑顔の似合う先生になってくださいね。」
教師になって初めての個別懇談会であるお母さんから言われた言葉です。そのお母さんは、教室に入って椅子に座るなり、
「先生、表情が暗いわよ。そんなんじゃだめだわ。○○先生(その当時30代で、とても明るくて人気のある先生のこと)みたいに明るくならなきゃ。」
と、おっしゃいました。
「先生は笑顔でいなくちゃ。笑顔の似合う先生に なってくださいね。」
最後にはそのようにおっしゃって席を立たれました。この時の個別懇談は、私の個別懇談のようになってしまいました。
◆このお母さんの言葉は私の心に響きました。でも、「笑顔の似合う先生になる」ために、何をどうしたらいいのか、分かりませんでした。ちょうどそんな時、当時から社会科授業の名人と言われた故有田和正先生の著作を読む機会がありました。その中に、「私は朝起きると、鏡の前で笑顔の練習をしています。」と書かれてあったのです。私は、「天下の有田先生でさえ、毎朝笑顔の練習をしている。俺もやろう。」と、その日から鏡の前で笑顔の練習を始めました。目指したのは「自然な笑顔」です。わざとらしい作り笑いの笑顔ではなく、心から嬉しそうな笑顔を目指して練習を始めたのです。
◆以来30有余年、毎朝、毎朝、具合の悪いときも、どこに行っても、この練習は欠かしたことがありません。今も毎朝やっています。でも、道は遙か彼方です。まだまだ、自分で満足するような笑顔になることはできません。なぜかと言うと、私の周囲には、「自分より遙かに上」と思える笑顔の素敵な方がたくさんいらっしゃるからです。傍目八目(おかめはちもく)で、相手が、「自分よりかなり劣っているな」と思える時は自分と同じくらい、「自分と同じくらいかな」と思える時は自分よりもかなり上、「自分よりも優れているな」と思える時は自分よりも遙かに上なものです。道は遙か彼方ですが、教師をやめる時までこの練習は続けます。
◆最初に書いたある子のお母さん。きっと私を見ていて、言わずにいられなかったのだと思うのです。でも、その一言がなかったら、今の私は無かったことは明らかですし、表情の暗い教師になっていたのは間違いありません。今もはっきりと覚えているあの場面、あの言葉に私は心から感謝しています。
◆きっと私たち教師の一言一言、保護者の皆さんの一言一言が子どもたちを元気付け、やる気にさせていることが、たくさんあると思います。言葉には「言霊が宿る」と言われていますし、それが巡り巡って自分自身に返ってくると言われています。
◆誰もが、人に言われて覚えている言葉があると思います。できれば、その人の人生にかかわるようないい言葉をかけたいなとこの年の瀬にあらためて考えています。
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